一般逆行列
一般逆行列
数学的背景
一言で説明すると、正方でない行列について、逆行列のようなものを定義しようというのが、 一般逆行列です。
行列Aに対し、
を満足する行列を の一般逆行列(generalized inverse)といいと書きます。
の場合、直線回帰問題
の場合、即ち連立一次方程式
の未知数の数よりも 方程式の数が多い場合には、最小二乗型一般逆行列と、 統計学における最小二乗法による直線回帰が等価です。
直線回帰問題
についての正規方程式は
です。
に対し
が一般逆行列になります。
の場合、過小定義問題
でのときは、 を 正確に満たす無数の解があります。 この場合、を最小にするただ1つの解 を見つけると、しばしば有用になります。 この問題は過小定義の連立一次方程式に対して 最小ノルム解を見つけることです。
数値例
SSL2のGINVの機能
の行列に対して、 次の関係を満足する行列を、 のMoore-Penroseの一般逆行列といいます。
この一般逆行列はに対して一意的に定まります。
SSL2のGINV (単精度)およびDGINV (倍精度)サブルーチンは、 の実行列を与えられて、 特異値分解を使い、 の一般逆行列の転置行列を返します。
特異値分解と一般逆行列
一言で説明すると、行列の対角化を、 正方でない行列に一般化したものが、 特異値分解(singular value decomposition)です。
行列に対して、
を特異値分解といいます。 ここで、は、でとなる行列、 は、の対角行列、 は、でとなる行列です。
の対角要素を、 の特異値(singular value)といいます。
を対角要素とする対角行列をとおきます。
は、の一般逆行列です。
特異値分解には、第一にハウスホルダー法でを二重対角行列に変換し、 第二にQR法で対角行列に変換する方法が使われます。 SSLマニュアルのASVD1サブルーチンの項目に、 詳細な解説があります。